2015年1月2日金曜日

ブレンデルピアノ独奏会を回想する

  神奈川県民ホール  1988.10.12

演題:
モーツァルト;デュポールのメヌエットによる九つの変奏曲KV.573

ブレンデル
ブラームス;主題と変奏 作品18

リスト;バッハの主題による変奏曲

シューベルト;ピアノソナタ第二〇番、D959


巨匠ブレンデルは、膨大な録音を残した。1931年生まれの彼は当年57歳、円熟期の音を聴かせた。特にリストは、精密に裁てられた音楽分析の上での精妙巧緻な名演であった。

私はブレンデルを思う時、丹念に音を拾い、けっして奮い立たず・・・演奏技実は高度、と言った彼の音楽とともに、政治、芸術、哲学についても一家言を持っているということである。これはウィーン的とか、ベーム、ウィーンフィル、から想起するウィーンの音楽家のモデルとは、少々違うと思う。調べると彼は青年時代を「小ウィーン」と呼ばれているグラーツで過ごしている。私はキャサリン嬢(前出)の案内でグラーツへ行った事がある。音楽水準の高い小都市でありながら、あきらかに華やいだウィーンとは異なっていた。
ブレンデルのピアノは、ウィーンに対する小都市グラーツの音楽なのでは・・と思う。ウィーン育ちのグルダ達とは違うのだ。

モーツァルトの曲は、ベルリンの宮廷室内樂長のデュポールの作品から主題を得て、即興的に作った曲である。

ブラームスの主題と変奏は、かれの意中の人、クララ・シューマンの誕生日を祝って書かれた作品である。

リストの曲は、名のとうりバッハの作品から素材を得た創作であって、反復低音による主題を多彩に変奏した作品である。

シューベルトの20番ソナタは彼の死の半年前に書かれた最後の作品3曲の内の1曲である。
最高のピアノ曲だ(内田光子の演奏稿を参照されたい)。