2014年10月22日水曜日

モーツアルトの短調

<モーツアルトの旋律は疾走する。アンダンテの哀しみは,宇宙をさまよい消え去る。涙はその速さに追いつけない。>  小林秀雄は短調の作品に涙する。

ゲオンは、モーツァルトの短調のなかに「allegre tristesse」「爽やかな悲しさ」が存在すると言う。モーツアルトは自己のうちに、宇宙のあらゆる音楽を持つていたのだ。
(モーツアルトとの散歩より)

ゲオンにしろ、小林にしろ、モーツアルト讃歌は揺るぎないが、その調べの中には共通して、現代れわれが失ったある種の音調があることに気ずくのである。

特にモーツアルトの短調作品のK.466,K.491ピアノ協奏曲。K.516弦楽五重奏曲。K.550交響楽40番。これらの曲きくたびに、自分の存在が宇宙とも一体化し安定した気持ちになる。
試みに私は、モーツァルトの短調の作品を列挙してみた。

モーツアルトの短調

1764(8歳)  k.15  フーガ  ィ短調 
1765(9歳)  k.16a 交響曲 ィ短調
1768(12歳) k.60ヴァィオリン・ソナタ21番ハ短調
ヴァィオリン・ソナタ22番 ホ短調?
1769(13歳) k.65   ミサ・ブレヴィス  ニ短調
1771(15歳) k.90 キリエ  ニ短調 
k.22 ブルサム     ニ短調
1773(17歳) K.173 弦楽四重奏曲第13番 ニ短調
K.183 交響曲第25番  ト短調
1778(22歳) K.310 ピアノソナタ第8番ィ短調
1780(24歳) k.390 リート「希望に寄せて」ニ短調
1781(25歳) k.341 キリエ  ニ短調
K.360 ピアノとヴァイオリンのための6っの変奏曲  ト短調
1782(26歳) k.229カノン ハ短調
K.230 カノンハ短調 
K.383c ピアノのためのフーガ へ短調
k.383d 全  上 ハ短調
k.384a セレナーデ12番ハ短調
k.384b アンダンテ   ハ短調
k.397  ピアノのための幻想曲 ニ短調
K.385h K.385f
1783(27歳) k.427  ハ短調ミサ(未完)
k.421  弦楽四重奏曲第15番 ニ短調
(ハイドンセット2番)
k.426  2台4手のピアノのためのフーガハ短調
k.453a   葬送行進曲  ハ短調
1785(29歳) k.466  ピアノ協奏曲20番 ニ短調
k.475 ピアノのための幻想曲 ハ短調
k.478 ピアノ4重奏曲      ト短調
k.477 フリーメーソンの葬送音楽 ハ短調
1786(30歳) K.491 ピアノ協奏曲24番  ハ短調
1787(31歳) K.511 ピアノのためのロンド ィ短調
k.515c 弦楽五重奏曲  ィ短調
K.516a.b 弦楽五重奏曲  ト・ハ短調
k.517  リート「老婆」  ホ短調
k.524 リート「クローエに」ホ短調
     1788(32歳) k.546 弦楽四重奏曲第27番 ハ短調
k.550交響曲第40番  ト短調
k.555 カノン「私は涙もろい」 ィ短調
k.557 カノン「我太陽はかくれ」へ短調
1789(33歳)  k.593a オルガンの為のアダージョ ニ短調
k.594  オルガンのための幻想曲へ短調
1791(35歳)  k.603 オルガンのためのアレグロへ短調
  k.617    管弦楽のためのアダージョ ハ短調
魔笛 成功
k.626 レクイエム ニ短調(ジェスマイアー補完)
           「 日本モーツアルト協会:モーツアルト作品総目録より作成」

モーツアルトの全作品626中、短調作品は50に満たないが、それらはいずれも、哀しさを超えて天空に漂う「疾走するモーツァルト」の代表作となってるのは特筆に値いする。