演奏者:ダニエル・バレンボイム
演題:J.S.バッハ ゴルトベルク変奏曲
バッハが彼の弟子テオフィール・ゴルトベルグの為に作曲したので、この名で親しまれている。別説に後援者の伯爵の不眠に対しての曲との説があるが信憑性は不確かである。
この変奏曲を語る場合、この曲を世界に知らしめた奇才ピアニストのグレン・グールドについて触れなくてはならぬだろう。ご承知のごとく1955年グールドは、ゴルトベルク変奏曲で、全く衝撃的なデビュウをした。この曲に対する解釈上の大胆さはそれまで受容されていた文化的水準、演奏の型、から完全に解放されていたのだ。彼の想像を超えたバッハ解釈は、全世界の音楽を愛する人たちを熱狂の渦に巻き込んだのだ。今ここで詳細に述べることは適当ではないので、他日を待ちたい。
私は、ここでは、グ―ルト自身の言を借りよう。(グレン・グ―ルト著作集Ⅰより引用)
「あの曲は、終わりも始まりもない音楽であり,真のクライマックスも、真の解決もない音楽であり、ポードレールの恋人たちのように「留まることのない、風の翼に軽々ととどま、っている」音楽である。
さて横道にそれたが、バレンボイムのバッハは、音が明るく透明で、そして美しい。最後まで柔らかさを保ち、弾き終わった。