NHKホール 1990.11.1
大江健三郎さんは、随筆「ワーグナーへの遠い旅」で、≪トリスタンとイゾルデ≫につき次のように記述されている。
<我々のような年齢になれば死については日々思うことがあるけれども、愛については遠い日を懐かしむようにして、というにすぎない。
しかし生涯の終わり近くなり、神秘的なほどの力で、「愛と死」のイデェが深くからみあいつつ恢復してくる・・・。僕はゾクリとおののくような気持ちになる。>
大江さんの言葉は、僕の胸にも突き刺さるようだ。「トリスタンとイゾルデ」は、いま常に私を襲いつづ
けている。